『ロウアーミドルの衝撃』

【評価】

☆☆☆


【紹介】
大前研一氏の著作で,我が国の所得分布が「一億総中流」には程遠い現状を踏まえ、企業・個人が取るべき行動が何かを指摘した著作です.個人的に気になったポイント以下2つです.



人口の8割がロウアーミドル以下である:ロウアーミドルとは,年収300万円〜600万円の世帯のことを言います.我が国では,このロウアーミドルと更にその下の階層が,全世帯の約8割を占めています.我が国は,「失われた10年」以降閉塞感と,低所得に悩まされてきた訳ですが,これは一時的な不況の類ではなく,我が国の政策・産業双方における構造的な問題に起因するものです.単に耐えるだけでは,景気も個人の生活も改善しないということを,我々は覚悟する必要があります.


ロウアーミドルは単に安いだけの商品には満足しない:ロウアーミドルのほとんどは,そこそこの家庭で育ち,自分は中流(少なくとも下流ではない)という意識が強い傾向があります.そのため,単に安いだけでは購買要因として不十分です.本書ではNatural Kitchen青山フラワーマーケット等を例に挙げ,ロウアーミドル層へのアプローチには"安いけれどもセンスのあるもの"や"手の届く贅沢品"をいかに提供するかが重要であると主張されています.


後半は,個人の消費のあり方について,我が国の政策について書かれています.読み物としては面白いのですが,大前氏の著作を普段から読む人には,重複する部分が多いです.



【管理人より】
ここ最近は,8時〜25時とオフィスにいる生活が続いたため,久々の更新となります.時間の都合上,内容が私の備忘措置的になっていくかもしれませんがご容赦下さい.本書の内容を踏まえ私の考えを書かせてもらいます.


現状を味方につける術を常に考え続けなければならない:現代は企業にとって戦いやすい時代と言えるでしょうか?成熟期以降,ビジネスはやりにくくなったと考えている方が多いかと思います.確かに,人口は減少傾向にあります.この国の個人金融資産の8割は,購買意欲の低い高齢者が握っていますし,彼等は「もしもの時」のために死ぬ直前まで貯金に励みます.新興国の人材水準,技術水準も確実に先進国に迫っています.しかしながら,現状に文句を言っていても時が逆流することはありません.高齢化も新興国の成長も考え方次第では,絶好のビジネスチャンスとなるはずです.常に建設的な思考をする癖を身につけることが現代の我々には極めて重要です.



【関連書籍】
『なぜ安くしても売れないのか』マイケル.J.シルバースタイン
ネクストマーケット』C.K.プラハラード


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