『30歳からの成長戦略』

【評価】

☆☆☆☆☆


【紹介】
A.T.カーニー、べインアンドカンパニーで数々の功績を残してこられた、山本真司氏の自己啓発に関する著作です。タイトルは『30歳からの〜』となっていますが、ビジネスの最前線で活躍していきたい若者全般にとって非常に有意義な内容となっています。いくつか要点を紹介します。


大衆化された知識・スキルを追い求めてはならない。近年、MBA、論理的思考、問題解決力といった言葉が至る所で聞かれるようになりました。これらの知識・スキルが役に立たないことは決してありません。しかしながら、今さら市販の書籍やセミナーによって大衆化されたこれらの知識を吸収しても、大きなアドバンテージとはなりません。大きな飛躍を目指すのならば、他の人が持ち得ない、差別化された知識・能力の習得に目を向ける必要があります。とはいえ最低限のビジネススキルは身につける必要があります。そこで

経営に関する最重要知識は超短期間で習得することがもう一つの鍵となります。具体的には、論理的思考、投資理論、財務理論、マーケティング、企業戦略については、世間で評価の高い書籍などを使うなどして、短期間でマスターしてしまうのが賢明です。その上で、常に自分を差別化するテーマを探求する姿勢が重要です。また知識・スキルと共に重要性をますのが

論理的思考と全体思考を共存させるための術を身に着けることです。全体思考というのは、「精神」に軸足をおいた思考のことで、創造性や感情への配慮といった事柄がキーワードとなります。論理的思考は、明快で、切れ味もあり、伝達も容易ですが、残念ながら論理のみで解決できるような問題は皆無なのが現実です。論理思考と全体思考を最大限に発揮し、ここの問題に当たる姿勢が極めて重要です。


【管理人より】
私個人の意見としても、著者の考えには大いに賛成です。上記内容の補足として、私からも一言二言書きたいと思います。

国内の知識労働者だけがライバルではない:これは、主に雇用者一人一人が念頭に置くべきことです。現在インドや東南アジアを中心に、英語が堪能で、ITに精通し、数学的思考に優れた、低賃金の労働力が大量に生まれています。われわれ先進国の労働者が生き残るためには、最低限かれらとやり合うだけの基本スキルを身につけると共に、独自の価値を提供する能力を開発することが急務なのは明白です。根拠の無い景気循環説や、現実逃避に走ることなく、現状をきちんと受け止め、しかるべき対応をとることが先進国民一人一人に求められているのではないでしょうか。

少なくとも、最低限のスキル、経営の知識、財務の知識、英語、ITなどは、工夫さえすれば、短期で習得可能なものばかりです。このレベルは早々にクリアして、次の段階に進みたいですね。

本日は、以上となります。


【関連書籍】
『会社を変える戦略』 山本真司
『40歳からの仕事術』 山本真司


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『レバレッジ時間術』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介・管理人コメント】
レバレッジリーディング』をはじめとする、ベストセラー作家の本田氏による著作です。内容としては、P.F.ドラッカー『経営者の条件』を、現代向け、若手・中堅社員向けにアレンジした印象です。有益な部分を2つ紹介します。1つ目が


目標から逆算してスケジューリングをせよという極めて基本的な事柄ですが、きちんと実践するのは、なかなか難しいものの一つです。成功のポイントは、とにかくまず最終目標を具体的な構成要素も含めて明確にする、そしてそのためにいつまでに何ができているべきかを明確化する、さらにそれをもとに日々何を何時間程度行う必要があるかを明確にし、日々のスケジュールの中に、そのための時間を入れてしまうことです。「時間ができたらやろう」と思っていても、基本的に突然時間ができることなどまずありません、しかもできたとして、予定もしていなかったことにすぐ着手することも極めて困難です。基本的なことですが徹底する際の効果は大きいはずです。2つ目は、

設定した時間内で成果を出すことに集中せよです。知識労働者の価値は、労働時間ではなく、出した成果によって決まります。締切を設けず、時間いっぱいまで取り組んでよい成果が生み出せることは極めて稀です。だらだらと時間ばかりかけたところで、良い成果物が生み出せる保証はありません。それに、一つのことに十二分な時間をかけられる余裕は、ほとんどの現代人にはないはずです。最終目標、日々の目標の明確化とともに、時間内で成果を出すという意識と、そのための思考の工夫が、成果を出すためには不可欠です。


上記のポイントは、ドラッカーをはじめ、多くの書籍でも指摘されていることかと思います。内容の分かりやすさ、実践方法の有益さの点を加味すると、本書は結構お勧めです。


【関連書籍】
レバレッジリーディング』 本田直之
レバレッジシンキング』 本田直之

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『ランチェスター戦略 弱者逆転の法則』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】
孫子、クラウゼビッツ戦争論とならぶ軍事理論であるランチェスター戦略を経営に生かすための解説書です。

タイトルに弱者逆転と書いてあるため、ともすると中小企業向けの経営戦略書との印象を受けがちですが、本書で言うところの弱者とは、「業界一位以外の企業」という意味です。そのため、大企業にとっても大いに有益な内容となっています。

要点については、また後日紹介します。

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『経営者の条件』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】
P.F.ドラッカーの三大古典(『経営者の条件』『創造する経営者』『現代の経営』)の一つで、エグゼクティブが成果を上げるにはどうしたらよいかについて書かれた本です。

自分自身のマネジメント、上司・部下のマネジメントに当たって有益な情報が随所にちりばめられています。経営者を目指す人間のみならず、一度手にとって見てください。


【関連書籍】
『創造する経営者』 P.F.ドラッカー
『現代の経営』 P.F.ドラッカー



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『会社を変える戦略』

【評価】

☆☆☆☆☆


【紹介】
元BCG、元A.T.カーニー極東アジア共同代表、前ベイン&カンパニー東京事務所代表パートナーという経歴を持つ、山本真司氏の著作です。小説形式で、業務改善、事業戦略、企業価値マネジメントの勘所が学べる良書です。要点を二つほど紹介します。

業務の最適化は企業体質強化の必要条件に過ぎない:IT技術を駆使した、物流・在庫管理の最適化(SCM)も、顧客接点の強化(CRM)も、企業間競争で遅れをとらないためには当然意識して取り組むべき課題です。しかしながら、情報の分析・加工面での優位性は容易に模倣が可能であり、持続的な競争優位の構築はまず望めません。他社には容易に真似できないその企業独自の文化・能力(コア・コンピタンス)を見出し、継続的に投資していくことが、企業の生存・成長には不可欠です。

金融的な手法を使いこなす努力を怠ってはならない:企業価値、株主価値の最大化や、デリバティブ証券化という言葉を聞いただけで、換金主義、株主一本槍経営と結びつける人がいます。確かに、株主価値の最大化を最終目標とした経営は、往々にして悲劇を生みます。単に、営業黒字額の絶対額を見ているだけの経営者と、その黒字額が、事業規模、調達した資本のコストと照らしあわせて適切かを意識している経営者とでは雲泥の差があります。企業価値や金融リスク、保有資産のずさんな管理は、資金調達コストの増大、場合によっては会社存続の危機を招きかねません。あくまでツールとして見なしつつも、金融・財務手法も最大限利用する姿勢が不可欠です。


【管理人より】
本書で登場する経営ツールは、いずれも基本的なものばかりかと思います。ただ、知っているのと使いこなせるのとでは大きな差があります。その手法がどういった意図で作られたもので、どういった場面でどういう使い方をすれば効果を発揮するかを理解しないまま、経営手法を用いることは自殺行為です。その点は、私も常に忘れないようにしなければなりません。上記の要点に補足で一点欠かせてください。

ファイナンスを間接業務と思って軽視してはならない:EVAという言葉をご存知でしょうか。税引後営業利益(NOPAT)から、負債の金利を引き、さらに株主への配当とキャピタルゲインを引いたものです。実は、投資家に見捨てられないためには、この指標へを多かれ少なかれ意識する必要があります。
普通、増収増益で、配当もきちんと払えていれば、株主から見放されないと考えるかと思います。しかしながら、株主からすれば、数ある企業の中から投資対象を選ぶわけなので、配当がいまいち、または株価の成長がいまいちならば、あえてその企業に投資する意義はなくなるわけです。つまり、営業黒字であっても、投資家に資金を引きあげられる危険性は十分想定される訳です。そのため、単に営業黒字・営業赤字をみるだけでなく、利益水準も正しく把握するために開発されたのがこのEVAです。
資金調達の失敗は、事業存続に関わるものです。企業活動の継続を願うのならば、拒否反応を起こしている場合ではありません。EVAの他にも、企業財務の健全化のために身につけておくべき金融手法は数多くあります。是非前向きに取り組んでもらいたい分野です。


【関連書籍】
『最強の経営学 島田隆
『非対称情報の経済学』 藪下志郎
『不況後の競争はもう始まっている』 ボストンコンサルティンググループ



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『世界不況を生き抜く 新・企業戦略』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】
BRICs経済研究で有名なエコノミスト門倉貴史氏の著作で、新興国経済の現状と、それに対する先進諸国(特に日本)の対応について書かれた著作です。ざっくりとポイントを紹介すると以下の通りです。


新興国を生産拠点としてではなく、市場として認知せよ:BRICs、NEXT11の市場規模を合計すると、2009年時点で約500兆円近い額となります。これらの国の経済は、年率10%というスピードで成長しており、各国ではそれに伴い多くの富裕層ならびに中間層、ニューリッチ層が出現しています。先進国企業も、自社の強みを上手く活用し、これらの市場に食い込んでいくことが、今後の成長のためには不可欠です。


新興国のインフラ需要は非常に大きい:大前氏の著作でも言われていますが、新興国の発展のためには、海外からの資本の流入が非常に重要となります。そのため、その各国政府はその促進のため、道路、電力、鉄道、上下水道などのインフラ整備に多くの予算を割いて言います。その際、日本の原子力発電技術、高速鉄道(新幹線)、浄水技術は大きな武器となります。これらを武器に、インフラ整備の案件の受注に成功すれば、それに直接的・間接的に関わる多くの企業にその恩恵が行渡ると考えられます。


一般的なビジネス書で、新興国の各国事情について、それなりに詳しくまとめられている書籍は少ないかと思います。このあたりの事情に疎いと感じている方にはなかなか良いかもしれません。



【管理人より】
題名だけを見ると、不況期における抜本的なビジネスモデルや、コスト削減のための大規模改革等々を予想しがちですが、内容としてはBRICsやNEXT11を市場として捉えたときの魅力について紹介したものといった感じです。著者も、本編で軽く触れていますが念のため二つ注意点を補足しておきます。

新興国の市場規模は、短期間での業績回復を狙ううえでは未だ不十分:BRICs、NEXT11の市場成長率には大いに目を見張ります。中には既に数十兆円規模にまで成長した国があるのも事実です。しかしながら、これらの国の現時点での市場規模は、千兆円近い規模を誇るアメリカ一国と比べると、十分大きいとは言えません。成長の布石として、新興国の消費者を狙うことは重要ですが、短期的な業績の向上として安易に新興国を狙うことは厳しいのが現状です。


顧客獲得以外の多くの問題への対応力が必要:新興国では、港湾、鉄道、電力といったインフラの未整備、規制や税制の課題((特に中国や東南アジア一部地域)、治安の問題など、顧客への製品・サービス以前に克服すべき課題が多数存在しています。これらについては、フィリップコトラー大前研一氏の著作でも何度か指摘され、いくつかの対処法が紹介されていますが、決して単純な問題ではありません。法務、物流、交渉事などに関する専門家集団とともに、柔軟な対応が不可欠です。


門倉さんは、新興国経済以外にも、様々なジャンルの著作を書いています。興味があれば調べてみてください。


【関連書籍】
BRICs富裕層』 門倉貴史
『中国が世界を買いあさる』 門倉貴史
『不況後の競争はもう始まっている』 ボストンコンサルティンググループ



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