『リーダーシップの鍛え方』 堀紘一

【評価】

☆☆☆


【紹介】
ドリームインキュベータ創設者の堀紘一氏が,同社社長から会長になった際に書かれたリーダーシップに関する著作です.国際化と規制緩和が進む中,変革を推進するうえで優れたリーダーシップを発揮する人材が,年齢に関係なく求められるようになったことを踏まえ,そのような人材になるために必要なものが紹介されています.


拙著『リーダーシップの本質』と根底となる部分はかなり似通っています.前書中にあったリーダーがすべき五つの仕事などは,ここでも登場します.全体を通して訴えているのは

  • 権限に頼ることなくリーダーシップが発揮できる人間になれるよう,自身の能力・人間性を磨きなさい
  • 相手から好かれるような可愛げ・愛嬌を身につけ,人との付き合いを広げなさい
  • 企業の生き残りを真剣に考えるのならば,優秀な人を採用し,育て,社内にとどまってもらう努力をしなさい


といったところでしょうか.特に本書では,リーダーに対し,人間性を磨くこと,前向きで規律ある行動をとることを強調しています.人間性に関しては,日常の同僚・部下とのやりとりから社外の人に至るまで徹底して相手の立場に立って考えることの重要性を,「地動説」という言葉を使って訴えています.


リーダーが行うべき5つの仕事,(組織の目的を設定する / 組織が置かれた現状を的確に把握・認識する / これから先の環境変化を読み,起こりうる事態に備える / 目的を達成するための戦略を策定する / 部下達を励まし,策定した戦略を実行させる),リーダーがすべき7つの行動(具体的な夢を語る / 自ら手本を示す / 部下達にチャンスを与える / 自分の頭で考えさせる / 上手にほめる / 部下達の明日を語ってあげる / 常に勝つ)の他に本書では,リーダー及びその候補者たちに,様々な本を読むこと,特に文学や哲学,歴史,心理学,さらには生物学などについても触れることを勧めています.これらがビジネスでも大いに役立ってくれることは容易に想像がつくと思います.時間をつくってこれらの勉強に取り組むのも大切かも知れません.



【管理人より】

本書は,『リーダーシップの本質』の次にあたるリーダーシップ関連の書籍となる訳ですが,良くも悪くも前著との差がやや少ないです.それだけ,主張していることに一貫性があるということでもあるのでしょう.前著に比べると,堀さんご自身の社長時代の失敗談や悩み苦労された経験談が載っており,より親近感をもって主張を取り入れることができるかと思います.

実際,民間企業は勿論,民営化ないしは何らかの変革を迫られている公的機関の多くにとっても,慣習にとらわれず,自分の頭で考え行動に移せる人材の調達・育成は急務です.このあたりは,組織戦略にかんする専門書と読み比べると良いかと思いますが,強い組織づくりには,良く練られた全社戦略,事業戦略,組織構成だけでなく,トップの強いリーダーシップが不可欠です.

確かに,我々はリーダーシップの成長を阻害する環境下で育ったのは事実です.しかしながら,それを言い訳にして自らを変えていかなければ,他の者の言いなりになるか,最悪自らの居場所を守れなくなるわけです.是非,この経済環境・政治情勢の変化を機会ととらえ,前進する人が多く現れてくれればと思います.私も,その一員として能力を発揮できるよう精進します.以上です.



【関連書籍】
『リーダーシップの本質』 堀紘一
『会社が放り出したい人 一億積んでも欲しい人』 堀紘一
組織力を高める』 古田興司,平井孝志
大空のサムライ坂井三郎
『たった一人の30年戦争』小野田寛郎


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