『即戦力の磨き方』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】
大前研一氏が,今後の世界経済,我が国における労働環境を基に,ビジネスパーソンの取るべき行動について述べた著作です.『ザ・プロフェッショナル』や『大前研一資本論』と重複する内容も多いですが,それらのエッセンスがコンパクトにまとまっており,短時間で読むのには良い一冊です.大事な主張を二つ紹介します.


ゼネラリストでもスペシャリストでもなくプロフェッショナルを目指せ:スペシャリストとプロフェッショナルの違いが何か分かりますか?弁護士や会計士,医師など,専門スキルを身につけ活躍してきたのがスペシャリストです.従来は,極めて価値の高い部類の人間でした.しかしながら,弁護士・会計士等の仕事は,次々とコンピュータソフトに置き換えられていますし,心臓外科をはじめとする高度な手術もインドで先進国の1/10の賃金で成功率99%以上で行うことができます.そこで自らの洞察力や判断力,学習能力を生かし,変化する状況下で自らの進むべき道を切り開いていくプロフェッショナルにならなければなりません.


「英語力」「財務力」「問題解決力」を磨け:変化する状況に対処していくうえで必要なものは何か?既存の資格といった類ではないのは明らかです.英語力に関しては疑いの余地は無いでしょう.先進国はもちろん,アジアの新興国・途上国は皆英語を必死になって勉強しています.ビジネスを行ううえで英語は最低限の素養です.財務力とは,自身の資産形成能力といえばイメージが湧くかと思います.投資は難しく危険なものと決め込んで銀行預金を続ければ,同じ元手でも30年で数億,数千万の差が生じることを肝に銘ずる必要があります.問題解決力は,日ごろ耳にする方も多いと思います.まずは,問題が何か?どこに問題が潜んでいるか?から始め,そこから解決策として考えうる仮説を構築し,検証する能力です.大切なのは,前例や過去の成功体験,既存のフレームワークに無理やり当てはめて解こうとしないことです.それらが役立つときも無いわけではありませんが,それ相応の根拠も無くそれらを行うのは思考停止とほとんど差はありません.




【管理人より】
自戒も込めて,我々が持つべき心構えを2点書きます.


ライバルは,全先進国,新興国にいることを心得えなければならない:大前氏の著作と縁のない方も,自分達が他の先進国や,新興国の労働者との競争を生き抜いていかなければならないことは,強く感じていることと思います.D.ピンクの『ハイコンセプト』にも書かれているように,単純労働はもちろん,中程度の知識労働もコンピュータやインド・東南アジアの労働者で対処可能となっています.ライバルとして真に意識すべきなのは,国内の同年代だけでは無いはずです.そのことを常に念頭に置き,仕事への取り組み,勉強の仕方,オフタイムのすごし方を検討する必要があります.


学習しなおすことを厭うてはならない:ザ・プロフェッショナル』でも強く主張されていますが,既存の知恵,考え方に頼って思考の幅を狭めてしまうことは,真の問題解決者となるうえで,非常に大きな障害となります.大前氏は,M.E.ポーターの5-Forceの他,自ら考案した3Cですら,使おうとする人間に対し,否定的な見方をしています.本書を読むと,それらは全て忘れろと言っているようにも取れますが,使い方さえ間違わなければ現代も,そして今後の経済環境下でも役立つ知見ではあると思います.ただ,上でも買いたように,それらに無理やり当てはめるのは手抜きでしかありません.既存の枠組みなしで考えることを「ゼロベース思考」と言います.言うは易しで,これができる人間は極めて希少です.数少ないその一人に自分がなれるよう,常日頃から思考の癖を排除する習慣をつけなければなりません.



【関連書籍】
ザ・プロフェッショナル大前研一
大前研一 新経済原論』 大前研一
大前研一 新資本論』 大前研一



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