『成長戦略論』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】

ハーバードビジネスレビューに投稿された論文の中で,成長戦略に関して優れた知見を与えてくれるものを選び編集した本です.掲載論文の執筆者は

といった錚々たるメンバーがそろっています.


上記三名の論文の内容は,彼等の著作の内容とも大きく関連しています.
「妥協の排除」が成長を生み出す(ジョージ・ストーク)では顧客が押し付けられていた商品分野に関わる妥協を排除しビジネスの定義に抜本的な変化を生じさせる事の重要さが述べられています.
バリューイノベーションによる価値創造戦略(W.チャン・キム)ではライバルと競合し相手を打倒することより,卓越した価値を生み出すことで競合企業を無力化することに目を向けることが重要であることを述べ,そのために業界が当然と見なしているファクターに対する疑いの目を持つ必要があると訴えています.
多角化と戦略的資産(コンスタンチノス C. マルキデス)では「希少性があり」「模倣が困難で」「別の何かで代用することが不可能な」経営資源(戦略的資産)を見極めたうえで新規事業を検討することの重要性について述べています.


本の中にはこれらに加えM&Aや市場戦略に関する論文が四本掲載されています.若干内容が古いものの現代の企業経営においても参考にできる部分が数多くあります.



【管理人より】

競合とのシェア争いに貴重な経営資源を費やすことについては,多くの企業が見直さなければならないのではないかと思います.短期的なシェア拡大に成功しても,その過程において強固なブランド力や技術優位性,高い組織力等が獲得できなければ,その後の収益維持・拡大は望めないためです.現在行っている広報戦略や販促活動,商品・サービス開発プロセス等々,我が国の企業にとって検討しなおすべきことは数多くあるはずです

新規市場の開拓,既存ビジネスモデルの抜本的改革の重要性を認識している企業の経営層は多く存在していることと思います.しかし実際に本腰を入れてそのことに取り組むのは,既存市場が成熟期に入ってからもしくは売上の低下が始まってからというケースが従来は多かった訳です.業績が好調な時期においても持続的な改善と抜本的な改革を起こす風土を,各企業とも確立していくことが不可欠なのではないでしょうか?



【関連書籍】
『BCG流 成長へのイノベーション戦略』 ジェームス・P・アンドリュー
『不確実性の経営戦略』 ハーバードビジネスレビュー編集部
『徹底力を呼び覚ませ』 ジョージ・ストークボストンコンサルティンググループ
ブルーオーシャン戦略』 W.チャン・キム
『戦略の原理』 コンスタンチノス C. マルキデス




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