『戦略の原理』
【評価】
☆☆☆☆☆
【紹介】
”現在の戦略的ポジションを拠り所に競争しつつも,次に占めるべきポジションを探す努力を続けよ”というのがこの本の主張です.内容としては,ベストセラーの『イノベーションのジレンマ』と『ブルーオーシャン戦略』の中間といったところでしょうか.ただし,この本の出版は2000年です.決してこれら二冊の模倣ではないので,そのあたりはご理解いただければと思います.
まず戦略的ポジションを見つける為に重要なものとして,以下の二つが挙げられています.
- 自社の戦略的資産(希少性があり,模倣が困難な資産やケイパビリティ)を獲得する
- 「適切なターゲット顧客」(独自のサービスにありがたみを感じてくれる顧客)を特定する
ただし戦略的ポジションには,たとえそれがどれだけ独創的であっても,寿命が存在します.そのため新たな戦略的ポジションの開拓に十分な資源を割り振ることが重要な訳です.本書では,その際に企業が意識すべきこととして以下の二つが提示されています.
- 市場の変化に合わせ戦略も柔軟に変え,戦略の変化に合わせ組織にも手を加える
- 新技術・新製品を受け入れるのは従来とは異なる顧客層であることを理解する
このことを念頭に置き,常に現状に甘んずることなく,変革を続けることが企業の存続・発展のためには重要であるということを,著者は何度も訴えています.市場への洞察や,資源配分に関する知見の獲得に大いに貢献してくれる本の一つだと思います.入手はやや大変ですが,一読する価値はあると思います.
【管理人より】
自社がどのようなポジションを取るかについて戦略的に考えることの重要性は,ほとんどの企業が十分認知していることと思います.いかなる企業においても経営資源は有限であり,あらゆる顧客に製品・サービスを提供することは不可能であるためです.ただしその重要さを理解していても,自分達が正しいポジションをとっているかは別であり,それを確認する際,またはこれから見つける際には大いに参考になるかと思います.また副題から,ポジショニングに特化した印象を受けがちですが,その点に関して一つだけ言及しておきます.本書は,
ポジショニング理論と資源ベース理論の統合を主眼に置いているという点です.ポジショニング理論の点では,M.E.ポーターやW.C.キムが,資源ベース理論(RBV)では,J.B.バーニーやD.J.コリスが極めて有名ですが,本書もそれらと遜色の無いほど得るものの多い一冊かと思います.絶版となってしまったのが非常に惜しい一冊です.興味を持った方はアマゾン等を利用し,何とか手に入れてみてください.
【関連書籍】
『競争戦略論I・II』 マイケル・E・ポーター
『BCG流 成長へのイノベーション戦略』 ジェームズ P アンドリュー
『イノベーションのジレンマ』 クレイトン・クリステンセン