『問題解決プロフェッショナル』

【評価】

☆☆☆☆☆


【紹介】

問題の分析・解決に必須のツールを分かりやすく解説した本です.

著者の齋藤 嘉則さんは元マッキンゼーコンサルタントです.著書が分かりやすいことで定評があり,シリーズ作の『問題発見プロフェッショナル』『戦略パワープロフェッショナル』も大変人気があります.

この本では

  • ゼロベース思考
  • 仮説思考
  • ロジックツリー
  • MECE
  • ソリューションシステム

が紹介されており,コンサル志望者をはじめ最近多くの学生が興味を持っているフェルミ推定についても,解説があります.いずれの章においても我々の身近にあるものを例にして,話が進められているため大変理解しやすいかと思います.



【管理人より】

論理的思考といえば『考える技術・書く技術』が有名ですが,話がやや抽象的であるのと,読むのに時間がかかるのが難点です.ある程度時間を割けるならばこちらの方が良いのでしょうが,短時間で読めてかつ応用もし易いという点で,この本の存在価値はなかなか高いのではないかと思います.


以前から,一部の企業経営の関係者の間で「戦略不要論」なるものを耳にすることがあります.その論拠は様々ですが,その一つが”調査を開始し,その結果を分析し,それをもとに上層部が経営戦略を立て,現場に浸透させるというプロセスを経ている間に経営環境が変化してしまい,立てた戦略が価値をなさなくなる”といったものです.

その主張自体には,筋が通っているものの,そこから戦略不要という結論に至るのには大きな違和感を感じます.確かに世の中の不確実性は増大し,現状把握一つとっても多大な時間と労力を必要とします.しかしながら,だからと言って企業の進むべき方向性を慎重に議論せず,やみくもに進んでも失敗は目に見えています.

重要なのは意思決定のスピードと絶えず考え続け,修正を厭わない姿勢ではないでしょうか.著者も本書の前半で「ベストな戦略が何かをいつまでも悩むより,ベターを積み重ねることが大事である」という言葉を綴っています.確かに,本当にベストな戦略を見つけることは非常に難しい訳です.しかし,手元にある情報をもとに最善の決定を下すこと,そして新たな情報が入り次第その決定を適宜修正することは不可能ではないはずです.


自戒も込めてですが,経営を考える人間において,短絡的思考,悲観的思考,思考停止といった類のものは,徹底的に排除しなければならないと,本書を読んでつくづく感じました.



【関連書籍】
『問題発見プロフェッショナル』齋藤 嘉則
『戦略パワープロフェッショナル』齋藤 嘉則
『戦略「脳」を鍛える』御立 尚資
『仮説思考』内田 和成


人気ブログランキングへ