『企業戦略を考える』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】
経済学・経営学に精通した浅羽教授と,元ベインアンドカンパニーのコンサルタントであった須藤実和氏の共著で,企業戦略の立案のプロセスや,主要ツールについて平易な言葉で解説がなされています.具体的に,本書で扱われている経営ツール・用語としては(細かいものも含めれば),S字カーブ / ポーターの5つの要因 / ポーターの5-forces / プロダクトライフサイクル / 経験曲線 / 経験曲線プライシング / PPM / 戦略的事業単位 / アンゾフの企業成長マトリクス / ポーターのバリューチェーン分析 / SECIモデル / ネットワーク外部性 / 価値相関図 / RBV / SWOTマトリックス / SWOTダイヤグラムなどがあります.


いずれもかなり有名なので,すでにネットや別の書籍で見聞きしている方も多いと思います.ただ,これらの用語において重要なのは,その一つ一つの意味を本当に正しく理解していること,そして各用語・各ツールのつながりがきちんと頭の中で描けていることです.その点では,これらの用語に慣れている人にとっても得るもののある一冊かと思います.



【管理人より】
本書を読んだ目的は,経営ツールの習得より,むしろ一つでも多くの事例を知り,自ら考える時間を取ることでした.実際それ以上の収穫はあったかと思います.その際考えたことを,自省も兼ねて書きたいと思います.


定量的に評価できない物事を正しく評価する目を養わなければならない:5-Force分析にしても,PPMにしても,確かに優れたツールであることに間違いはありません.しかし各要素を数字で測ることも,仮に数字で表されたとしてもそれが高いか低いかを評価することも,実際には極めて難しい問題です.ただ,『不確実性の経営戦略』等でも主張されているように,不確実なことが多かいからといってそこで思考を停止させてしまっては,単に破滅へと進むだけです.今までの企業事例の研究,現在の他業界の現状など,参考にできるものは何でも参考にし,しつこく考え続けることが肝要なのだと思います.


ケーススタディとベンチマーキングを混同してはならない:戦略を立案する際,競合他社や他業界について研究する機会は数多くあると思います.しかしながら,単にそれらを比較検討し,良さそうなものがあれば模倣するといったスタンスでは,長期的な競争優位に繋がる戦略を生み出すのは困難かと思います.事例を研究する際は,何故その戦略がうまくいったかを理解するまで思考錯誤を続け,市場で勝つための本質をつかむことが不可欠です.


後日,内容紹介の部分をもう少し丁寧にするかも知れません.とりあえず今日は以上です.



【関連書籍】
『経営戦略の経済学』浅羽茂
『企業戦略論』 J.B.バーニー
『戦略立案ハンドブック』D.A.アーカー


人気ブログランキングへ ビジネスネット