『高収益企業のつくり方』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】
名経営者,稲盛和夫氏の主宰する「盛和塾」における,参加者との質疑応答のなかから,高収益企業のつくり方に関連するものにテーマを絞って掲載した本です.理論や手法に特化した経営書に比べ,経営者の心構えや,気高い経営理念の大切さ,社員との意思疎通の大切さなど,人間的要素を含んだ助言も豊富に盛り込まれた著作となっています.重要と感じた考えをいくつか紹介します.



高収益の追求は非難されるべきことではない:高収益と搾取とを結びつける考えが一部の人間の間に存在しますが,それは大きな誤解です.不適切な価格設定や給与水準を続ければ,市場からの撤退や優秀層の離反など手痛い報復が待っているわけで,そのような会社が高収益を維持することは不可能です.高収益は,その会社の知恵と努力の結晶であり,製品開発の工夫から経費削減の徹底による高収益の追求は極めて正当なものであると考えるべきです.


社員が経営に参画する仕組みを整えよ:稲盛氏の経営手法の中にアメーバ経営というものがあります.会社を小集団に分け,その各組織にリーダーを置き,独立した中小企業のように経営する手法です.重要なのは,単に分割しトップを置いただけではないことです.リーダーが部下に対し,単に自分の考えた事を実行させるのではなく,部下からも積極的に意見を聞き,共に考える姿勢を持つよう教育することも重要ですし,また経営状況を社員一人一人が把握できるよう会計システム・情報システムの整備を徹底することも極めて重要です.そのようなことができてはじめて,使命感・責任感を持った社員が積極的に仕事に打ち込む組織というのは実現するわけです.


経営者自らが強い願望を持ち,その実現を心底願わなければならない:税引前利益率を30%にするにしても,手元資金に余裕を持たせるにしても,口で言うのは簡単でも自分達の会社では無理だと言い出す経営者が少なからずいます.しかしながら,人間は心からそうしたいと強く願わなければ何事も成就できません.自分がそうしたいと信じ,社員にも繰り返しそのことを伝え,一心不乱に打ち込むことで初めて困難な目標に対する解が生まれるのです.



【管理人より】
稲盛氏の「経営哲学」「人生哲学」からは学ぶことが極めて多いです.最新の経営理論も絶えずチェックすべきなのでしょうが,時代を超えて通用する経営の真髄といったものに触れることも大いに価値があるかと思います.今後仕事をするうえで意識しなければと感じたことを二点書かせて下さい.


どのような企業・事業であっても収益を上げる道があると考えなければならない:ありふれた仕事で,付加価値の水準も高くない業種では,多くの会社が低収益は致し方が無いと考えがちです.しかし重要なのは,そのような状況下でも思考停止させることなく,生産性をあげるなり,新たな付加価値を作り出すなりといった創意工夫を行い,何としてでも儲かる仕事へと結びつける姿勢であり,それを本気で貫けば何らかの活路が見出せるはずです.


売上拡大には投資はしかたないという考えを改めよ:生産性の向上や新規顧客開拓を意図して,最新の生産機械の導入や,大型店舗の建設,施設の増改築の誘惑駆られることは少なくないと思います.しかしながら,大規模投資は,借入金の増加は確実に引き起こしますが,売上や利益率の増加は必ずしも意図したとおり起こるわけではありません.売上予測は希望的観測の下で行わないこと,常に損益分岐点を意識すること,既存の設備の効率的利用や業務の見直し,サービス向上等の可能性を無視しないことなど,意思決定をする際の思考の偏りを防ぐ注意は欠かさないようにしなければなりません.


以上となります.



【関連書籍】
稲盛和夫実学』 稲盛和夫
アメーバ経営』 稲盛和夫



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