『イノベーションのジレンマ』

【評価】
☆☆☆☆☆


【紹介】

優良企業の経営慣行の典型と言える.”顧客の危険に注意深く耳を傾け,競争相手の行動に注意し,収益性を高める高性能・高収益の製品の設計と開発に資源を投入する.”という姿勢に対し警鐘をならした本です.


ではどのような時にこのようなプロセスが過ちとなるのか?それは”新市場”を生み出す程の威力を持った技術が開発された時です.往々にして,そのような技術は開発当初において

  • 既存顧客の満足する水準の性能を持っていない.
  • 一商品あたりの利益が少ない.

といった特徴を持っています.となれば当然市場規模や収益性を元にした分析を行った場合,従来の商品を改良し,既存顧客向けに販売するという提案の方が優れたものに映る訳です.



その結果,優良企業が撤退を余儀なくされた業界が多く存在していることは想像に難くないと思います.

ではどうすればこのような事態に対処できるのか?既存顧客や既存パートナーとの関係を崩すことなく,かつ新市場の可能性を切り捨てないようにするにはトップは何を意識すべきなのか?どのような組織が必要なのか?各々自分なりに仮説を立て,その後この本の内容を見て頂きたいと思います.



【管理人より】

コンサルタントを目指す人間として,この本からは非常に多くのことを学びました.優良企業の意思決定プロセスに従った方が我々にとっては楽です.それなりに信頼性のあるデータを集めることも,それを元に経営幹部を説得することも比較的容易だからです.

しかしながら本当に顧客企業のことを考えれば,不確実性が高くとも新成長事業を開拓する必要性を経営層に理解させ,そのために何をすべきなのかを提案し,実行に移す存在が不可欠な筈です.その際データによる裏付けしかできないようでは恐らく上手くいきません.企業にとって真に必要なものを見つけ,経営陣に提案できるだけの能力と気概をもった人間を目指さなければならないと思わされました.


【関連書籍】
イノベーションへの解』クレイトン・クリステンセン
『明日は誰のものか』クレイトン・クリステンセン
『不確実性の経営戦略』ハーバードビジネスレビュー編集部
マッキンゼー 組織の進化』平野雅夫



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