『BCG流 成長へのイノベーション戦略』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】

ボストンコンサルティンググループのパートナー等によって執筆された成長戦略に関する書籍です.イノベーションに関してはクレイトン・クリステンセンのイノベーションのジレンマシリーズが大変秀逸かつ有名ですが,それとは若干違った切り口でイノベーションの創出や組織戦略について述べられています.


この本ではイノベーションプロセスの進め方として

が紹介されています.

企業が属する業界や所有している経営資源,目指す方向性などによってこの三つの内のどれが適しているかが変わる訳です.自動車製造企業や精密機器製造企業のように部品製造部門との緊密な連携が不可欠な企業ならばインテグレータが良いでしょうし,特定の経営資源(例えば低コスト部品製造工場や強力な販売組織)が欠けている企業ならばオーケストレーションを選び,それらを補うのに最適なパートナーを見つけ,自分達は開発・商品化で最大限の価値を提供する形をとることで,成功確率の向上及び投資リスクの低減が可能になるという訳です.


いずれも特別目新しいことではないのかも知れませんが,これらを系統的にまとめ,意思決定の指針を示した点でこの本が提供できた価値はそれなりに大きいと思います.(言い方が若干偉そうですね,すみません)




【管理人より】

先進国企業の生存にとって,イノベーションを起こせるかどうか,そしてどのようにしてそれを行うかはまさに喫緊の課題です.日本・韓国・欧州先進国の一部のように間もなくして人口減少に直面する国にとっては,オーケストレーションやライセンシングのように,他企業の経営資源をうまく利用すること,それも単なるアウトソーシング目的ではなく新技術・新サービスの実現のために互いの強みを補完し合う関係構築も視野に入れた利用を心がけることは極めて重要な手段の一つなのではないでしょうか?

勿論課題も数多く存在します.技術の流出リスクもそうですが,何より相手企業にとって自分達の会社が魅力的な経営資産を持っていなければ,協働につなげることはできない訳です.先進国企業が今後とも技術優位を持つにはどうしたら良いのか?どのような技術戦略が必要なのか?組織はどうあるべきなのか?もしくは技術以外で先進国企業が提供できる価値はないのか?
考えなければならないことは山ほどありそうです.




【関連書籍】
イノベーションのジレンマ クレイトン・クリステンセン
『成長戦略論』 ハーバードビジネスレビュー編集部



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