『マッキンゼー式 最強の成長戦略』

【評価】

☆☆☆☆☆


【紹介】

マッキンゼーコンサルタント等によって書かれた大企業の成長戦略についての本です.
企業が勝ち残るためには市場のセグメントとニーズ,そしてそれらを満たすのに必要な能力をつぶさに理解することが不可欠である
という主張から始まり,企業の生存・発展のために重要な要素を,調査結果を元に紹介しています.


非常に示唆に富んだ見解として以下の二つがあります.

  • 大企業の成長パフォーマンスの差を生み出す要素を分析すると,根底をなす市場セグメントの成長率による寄与が46%,M&Aによる非有機的成長による寄与が33%,市場シェア獲得による寄与はわずか21%である
  • 平均的な大企業は,根底をなす市場セグメントの成長から6.6%の成長,M&Aによる非有機的成長から3.1%,シェア獲得から0.4%の成長を得ている


このことから,従来多くの企業が既存事業のシェア獲得に労力を傾注してきたことがいかに非効率的であったかがわかります.ですから成長に寄与するセグメントの特定と,戦略的な事業の買収・売却が非常に重要な訳です.それを可能にするのが,冒頭に挙げたきめ細やかな分析・理解です.情報技術の進展により,コストを抑えつつこれらを実行することが可能となっています.従来の考えから脱却し,真の成長戦略を進めていくことが企業にとって必要とされています.




【管理人より】

市場セグメントの細分化とコストの抑制については,IT革命後に出版されたマーケティングの書籍でもしばしば紹介されており,このことを意識している企業は多いかと思います.しかしながら,それをシェア獲得に限定するのではなく,中長期的な成長も考慮して活用していくことを訴えている点で,この本が提供している価値は大きいのではないでしょうか?


我が国においても,最近は自社の企業価値向上のために積極的にM&Aに取り組む企業が増えつつあり,私もそのことは大いに歓迎です.しかしながら,近接事業間のシナジー効果や規模の拡大によるコスト優位性を過大評価した事例も少なからず目にします.今後の我が国における事業の統合・分割の在り方についてはまだまだ検討が要りそうです.


この本だけでもかなり有益な情報を含んでいますが,さらに知見を深めるためには【関連】で紹介している書籍が役に立つかと思います.上の二つは事業の統合・分割について,残りの二つは情報技術と組織戦略・市場戦略について示唆に富んだ内容を含んでいます.




【関連】
イノベーションのジレンマクレイトン・クリステンセン
『「選択と集中」の戦略』ハーバードビジネスレビュー編集部
コトラー 新・マーケティング原論』フィリップ・コトラー
『グランズウェル』(シャーリーン・リー)



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