『マッキンゼー 戦略の進化』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】

McKinsey QuarterlyおよびHarvard Business Reviewに投稿された論文の内,現代の不確実性に対処するうえで役立つ知見を得られるものを選び編集した本です.従来の競争戦略の考え方から,どのように思考を変えるべきかを学ぶ目的としても,また単純にマッキンゼーコンサルタント達の考えたフレームワークを学ぶ目的としても使える良書です.


お勧めの論文は以下の4つです.
Chapter1.学習優位の戦略:変化の激しい現代における戦略策定においては,戦略の細部にこだわって時間を浪費するよりも,戦略の大きな方向性を見定め,実行プロセスの中でその戦略に磨きをかけていくことの重要性を述べています.

Chapter3.成長の階段:連続的にスキルやオプションを積み上げていくことの有用性について述べています.また優れた成長企業の特徴についても触れられており,特に印象的であったのが”優れた成長企業は何を持っているかよりも,何が必要かに注目し,社外に飛び出してそれを手に入れようとする”という記述です.企業の成長戦略を考えるうえで重要な示唆が得られるかと思います.

Chapter8.市場重視の経営戦略フレームワーク:事業を維持すべきかについての意思決定において有用なMACSと呼ばれるフレームワークを紹介しています.事業そのものの価値創造能力だけでなく,親会社が事業に与えられる価値も重要視して設計されている点でなかなか優れたフレームワークの一つではないかと思います.

Chapter10.「戦略の実現」に向けて:戦略の実現のために,本社部門と事業部門とでミドル層の強固な連携が重要であることを主張しています.またその際トップがどのように対応するべきかについても述べられています.


内容としては企業の成長戦略に関連したものが多いです.その点で,『不確実性の経営戦略』マッキンゼー 最強の成長戦略』あたりと併せて読むとより豊かな知見が得られるかと思います.



【管理人より】

Chapter1でも述べられている通り,一度立てた戦略をその後もそのまま用いるのでは無く,経済環境の変化に合わせ柔軟に修正していくことは不可欠かと思います.不確実性の高い現代においては,そもそも完璧な戦略を立てることは非常に困難であり,その細部にこだわるが故に身動きを取れないでいることの方がよほど危険であると思われますし,仮に完璧な戦略の策定に成功してもそれが陳腐化するまでの時間は非常に短いと思われるためです.

戦略の見直し,事業ポートフォリオの見直し,組織体制の見直し等々,経営層は自社の経営資源のメンテナンスに今後さらに大きなエネルギーを注がなければならなくなるのではないでしょうか?

ではそれに対しコンサルタントができること,コンサルタントがすべきことは何でしょうね.戦略の実行・修正は勿論のこと,それらを柔軟に行えるよう経営層・ミドル層をサポートする役割がかなり重要になるのではないでしょうか?ともかく,コンサルタント達も自分達の在り方を考え直さなければならない時期に来ているのかと思います.今後の生活の中でその答えを探していかなければいけませんね.



【関連書籍】
マッキンゼー 最強の成長戦略』 パトリック・ヴィギュエリ
『不確実性の経営戦略』 ハーバードビジネスレビュー編集部
イノベーションのジレンマ クレイトン・クリステンセン


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