『実践する経営者』
【評価】
☆☆☆☆☆
【紹介】
企業経営の理念と方法において世界で最も評価を受けている人物の一人であるP.F.ドラッカーが”ウォールストリートジャーナル”に投稿した論文を,抜粋・編集したものです.内容は全社戦略から組織,技術開発と幅広くカバーされています.ひとつひとつの論文は大変印象深い内容でした。今も頭に残っている文言を、以下に抜粋して紹介します。
- 既に起こった環境の変化に強みを合わせることからプランニングは生まれる.そのとき不確実性は脅威ではなく機会となる
- 変化が統計的に意味のあるものとして表れる頃には,機会としての利用は勿論,対処することすら手遅れになっている
- 多角化や買収に際して問うべきことは「我々がその事業に貢献できるものは何か」である
- 製品の製造コストを元に価格を設定するのではなく,消費者にとって望ましい価格設定を元に製造コストを決定するべきである
ハーバードビジネススクールやマッキンゼー,ボストンコンサルティンググループなどから最近出版された書籍にも似た内容の主張はありますが,驚くべきことにドラッカーは1970年代から1990年代といった時期に、既にこれらのことを訴えています.一度読んでみれば,ドラッカーが賞賛される理由が多少なりとも理解できるのではないでしょうか.
【管理人より】
1980年の時点で既にイノベーションや技術戦略・市場戦略に関して,上記の内容をはじめとする優れた主張がなされていたことは驚きです.しかしながら2004年にこの本が出版されたことからも,また実際に皆さんが多くの企業を見ていても分かる通り,これらのことをきちんと理解している企業は少なく,実践できている企業となるとほとんどないのが現状です.
コンサルタントは学者・評論家とは違い,実際に企業を変えなければいけません.経営に関する知見を習得するのも大事ですが,目の前の会社で何が起こっているのか?その会社に対して最も優先的に行わなければならないのは何なのかを見定める能力も身につけていかなければいけませんね.言うは易しといったところですが...
【関連書籍】
『イノベーションのジレンマ』 クレイトン・クリステンセン
『マッキンゼー 最強の成長戦略』 パトリック・ヴィギュエリ