『組織力を高める』
【評価】
☆☆☆☆
【紹介】
株式会社三景の代表取締役の古田興司氏と,ローランドベルガーのパートナー平井孝志氏の共著であり,強い組織とは何なのか,そして強い組織をつくるためにはマネジャーは何を心がけ,どのような行動をとるべきかについて述べた本です.どうやらこの本は『現場力を鍛える』,『経営の構想力』の続編という位置づけなようです.三作品には以下のような特徴があります.
- 『経営の構想力』は経営組織を経営者の視点から述べた本
- 『組織力を高める』は経営組織をマネジャーの視点から述べた本
- 『現場力を鍛える』は経営組織を現場社員の視点から述べた本
本書では,組織力という言葉を「遂行能力」と「戦略能力」の積として定義しています.そしてそれぞれの因子に対して以下のような三段階の状態を提示しています.
- [「完遂する力」なし] → [完遂する組織] → [期待を超える組織]
- [ビジネスモデル不在] → [シンプルで整合性のあるビジネスモデル] → [組織と戦略が共に進化]
そしてこれらをより上の段階に持っていくためにマネジャーがすべきことについて述べています.意思決定の方法や,業務伝達時・業務評価における注意点等々について,ロジックと個々人の感情への配慮がバランスよく組み合わされた有益な助言が書かれています.
【管理人より】
『マッキンゼー 戦略の進化』や『不確実性の経営戦略』などでも述べられていますが,複雑性・不確実性の増した現在の経済環境においては,組織・戦略の柔軟な変化が不可欠だと思います.その実現方法として,シンプルで整合性のあるビジネスモデルのもと,自発的に考える組織づくりを提案した本書の内容はなかなか興味深いものでした.
組織戦略の立案・実行というのは,本当に難しい仕事だと思います.ロジックだけでは人は動きませんし,短期間でやるべきこともあれば,長期間かけてじっくり取り組まなければ効果が出ないものもあります.しかしながら,組織の力がいかに重要かは,国内外の一流企業を見ていればわかる筈です.優れた戦略や設備投資・研究開発投資だけで,あの水準には達することはなかなかできませんからね.
【関連書籍】
『現場力を鍛える』 遠藤功
『経営の構想力』西浦裕二
『組織戦略の考え方』 沼上幹
『マッキンゼー 戦略の進化』名和高司
『不確実性の経営戦略』 ハーバードビジネスレビュー編集部