『マーケティングのジレンマ』

【評価】

☆☆☆


【紹介】
マーケティング担当者が遭遇する,難しい意思決定の場面を紹介し,それに対しどのように行動すべきかを複数の専門家が答えるという,少し変わった構成の本です.取り扱われているケースは,以下の6つです.

  • 製造物責任の不透明さにいかに対処すべきか
  • 顧客を一律に扱うべきか
  • 売り出し中のキャラクターをいかに育てるか
  • グローバル戦略とローカル戦略をいかに両立させるか
  • 顧客が望まない品質改善を行うべきか
  • 人権団体からの圧力にいかに対応すべきか


示唆に富む意見が多かったのはCase5の”顧客が望まない品質改善を行うべきか”です.ある民間病院において,新システムを導入すべきか否かの意思決定をしなければならないケースが扱われているのですが,患者へのアンケート結果や従業員の意見をそのまま受け止めてはならないということを学ぶ良い教材となりました.


他のCaseもなかなか考えさせれるものが多いです.Caseの解答も,回答者によって様々な意見が述べられており,一つのCaseから多くの考え方・視点を学ぶことができます.ただ個人的には,より販売戦略寄りな題材を扱って欲しかった感はあります.



【管理人より】

従来日本企業の多くは,顧客の声を商品・サービスに反映させようと,多額の調査費用を割いてきました.しかしながら,投資に見合うだけの収穫が得られることは,ほとんどなかったのではないでしょうか.

情報収集において重要なのは,情報の量ではなく,その情報の信頼性,意思決定に及ぼす影響といったことのはずです.アンケート調査ひとつとっても,大まかな内容だけ決めて,残りは広告会社に委託してしまうような従来の姿勢では,到底望ましい結果は得られないと思います.

質問を考える際は,そのひとつひとつに対し,

  • この質問はどのような対象に向けてすべきなのか?
  • どのような層の意見を特に重視すべきか
  • この質問の返答からどのような結論が導けるか
  • この質問の回答は自分達の意思決定にどのような影響を及ぼすか
  • この質問のしかたで顧客の声が引き出せるか,自分達が望んでいる結果が得られるのか
  • この質問の返答をどの程度信じるべきか
  • ・・・

といった様々な要素を検討する必要があるのではないでしょうか.

私も今後様々な資料・データから価値ある情報を引き出さなければなりません.自戒も込めて色々と書かせて頂きました.今後とも精進に励みたいと思います.



【関連書籍】
特になし


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