『隠れた人材価値』

【評価】

☆☆☆☆


【紹介】
アメリカにおいても,組織の人間,特に現場の人間一人一人を大切にすることで,大きな成功を収めている企業が数多くあることを紹介し,今後の組織の在り方について,一つの提言を行っている本です.

本書では,成功事例として以下の7社が挙げられています.


そしてこれらの成功企業との対比でセミコンダクターの事例が紹介され,最後に著者らによる総論という形で構成されています.変化の激しい現代においては,現場の社員も自ら考え行動することで,組織全体が日々進化することが求められています.そのことの重要性と,その実現のために経営陣がすべきことについて,有益な示唆が得られるかと思います.




【管理人より】
近年,日本企業においても,従来のピラミッド型組織を見直し,組織のフラット化や成果主義の導入を目指す動きが見られましたが,その多くがうまくいっていませんよね.

多くの企業が,組織のフラット化を管理ポストの削減に使ったり,成果主義を人件費削減の口実に使っていること,また正しい意図のもとにそれを行おうとしたものの,情報伝達方法や評価基準,報酬体系,の詳細が甘かったり,一貫性がなかったりすることが主な原因といったところでしょうか.


PFドラッカーをはじめ,多くの有識者が主張しているように,組織は常に古いもの,陳腐化したものを廃棄し,環境に適合していくように構成されなければなりません.また,ローランドベルガーの遠藤さんやマッキンゼーの平井さんおっしゃっているように,企業の競争優位には,優れた戦略だけではなく,それを迅速かつ効率的に実行し,適宜修正を加えられる組織を作り出すことが,変化の激しい現代においては重要であるはずです.


マッキンゼーなどは,優秀な人材をめぐって企業間が争う時代を予想していました.確かにその可能性も高いでしょうし,業界によっては,その争いに勝つために何が必要か真剣に議論する必要があるのだと思います.

ただ,この本にあるように,普通の人からなる組織が,卓越した業績を残せるよう組織をデザインし,それを回していくことの方が,多くの企業にとっては重要なのではないでしょうか.



【関連書籍】
『ウォーフォータレント』エド・マイケルズ
マッキンゼー 戦略の進化』名和 高司
マッキンゼー 組織の進化』平野雅夫
『組織改革 創造的破壊の戦略』高橋俊介
『現場力を鍛える』遠藤功


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